自衛官の新規募集をめぐり、福岡市が防衛省に対象者名簿の一括提供を行う方針を固めたことが29日、分かった。市個人情報保護審議会に諮問し、目的外利用を認める答申が得られ次第紙媒体で提供する。名簿を提供できなかった理由に台帳の電子管理システム上に対象者の抽出機能がないという制約があったことが判明。来年1月のシステム更新で制約が解消されるため一括提供に踏み切る。こうしたシステム更新は全国の自治体でも進んでおり、一括提供できる環境整備が進むと期待される。
防衛省は自衛官募集にあたり、18歳前後と22歳前後の対象者に要項を送付している。その際、同省地方協力本部職員らが各自治体の住民基本台帳を基に名簿を作成。しかし、平成31年3月末時点で全1741の市区町村のうち、福岡市を含む931自治体が名簿を紙や電子媒体で一括提供をしておらず、自衛隊側が住民基本台帳から手作業で書き写していた。
安倍晋三首相が今年2月、多くの自治体が自衛官募集の協力を「拒否しているという悲しい実態がある」と発言したのを受け、福岡市の高島宗一郎市長が確認したところ、昭和63年に導入した市の住民記録システム(基幹システム)に生年月日などを指定して対象者を抽出する機能がなかったことが判明した。
同市の藤田三貴総務部長は「システム上、募集対象者に限定したデータが作成できなかった。他自治体も同じような状況ではないか」と説明する。
ただ、同市が令和2年1月、32年ぶりに更新するシステムには抽出機能が搭載されていることから、防衛省に対象者名簿の一括提供の求めに応じることができると判断。市個人情報保護審議会に諮問するなど名簿の一括提供に向けた手続きを進めることにした。
矢野経済研究所の調査によると、自治体向けシステム市場は平成30年度、ここ数年保留されていた基幹システムの更新などに需要の軸足が移っている。システム更新によってハード面の体制は順次、整うとみられる。台帳閲覧すら認めない178自治体(30年度末)を含む6割超の市区町村でも一括提供できる環境が整うとみられる。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース